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学生の自律性を育む環境と社会の仕組みがアーティストを育てる。

― そういう環境の中で周囲と切磋琢磨しながら学べるのはすごく成長できそうな気がします。今、思い返してみて何か影響はありましたか?

どうなんだろう、私の場合はあまり、コミュニケーションしてどうこうというのはありませんでしたが、他の人の作品や、やり方を見て、違う視点を持てたということはありました。良くも悪くもやはり、みんな個性がありますから。口には出さないですけど、心の中ではみんな自分が一番だと思っているとこってあるんですね。だから誰かと比べるというより、みんなそれぞれが自分自身との戦いを追及していく感じですね。

― 人によってはとても我慢のいるプロセスですね。自立心や美意識がしっかりとないと途中で心が折れそう。家具作りに限らず、言えることだと思いますが、合格点を自分で出さなくてはいけないというのって難しいじゃないですか。特に与えられた環境の中で評価を得る環境で育った日本人にとって。

確かにそうですね。人によってはこれぐらいできていれば素晴らしいと思われても、自分の中ではまだまだ全然、納得がいくレベルに至っていないということはよくあることです。

― ということは、学校の中での評価基準ってとても難しいところですよね。

はい。ですから、最終的に一つの作品を何処のラインで完結させるかは自分自身で決めるしかないんです。学校や先生側から、これでは、まだダメとか何か絶対的な基準があってそれらと比べられるようなことは無いです。

― 自由度が高い分、見方によってはすごく厳しいところのように思えます。

確かに、こういった教育方針は日本の一般的な学校教育とは逆の部分なので、ある種のカルチャーショックを受けるところだと思います。例えば、戸棚一つ作るにしても、課題を与えられるだけであとはどの材料を使って何をどのように表現するのか、それら全てを自分で考えなくてはいけない。そのプロセスで必要な技術があれば、それを先生に聞きに行くっていうようなやり方ですね。例えば、何かの作品を鑑賞してディスカッションする場合でも必ず、みんな意見を求められますし。

― 個人の考え方を尊重してもらえるということでもある半面、答えが無い世界でしっかりと自分の「考え」を持つというのは難しさもありますね。

向こうで子育てをしていて面白いなって感じたことがあるのですが、幼稚園で授業を見た時に先生が園児に絵をかかせた後、その絵を教室の真ん中に置いて園児一人一人に意見を聞いていくというのがあったんです。そしたら、子供達はちゃんと、「この空の青色の使い方がいい」とか答えて意見交換が始まるんです!その時にやっぱり、こういうところからきているんだなって思いましたね。

― 日本では特に大人になると「恥ずかしい」という概念が先に来ますからね。そうやって育ったら、いわゆる「既成概念」っていうものが付きにくくなりそう。

そうなんです。先生たちも子供であろうと絶対に個人の意見を批判したりしない。だから、すごく、一人一人も「自分で考える」ということをやるようになりますね。

― 社会全般にそういった地盤があるのはモノづくりにおける独創性を育むと同時にアーティストが育ち易い環境といえますね。

アーティストが育ち易い環境といえば企業や社会のサポートがすごくあるなっていうのも感じました。例えば、私が向こうで職人試験の時に作った戸棚にはハッセルブラッドという歴史あるカメラメーカーの名前とマークを使わせてもらったのですが、日本で大手のブランドに名前とロゴを貸して下さいと言っても、ほとんどダメだと思います。ところが、向こうでは別に有名でもない、ただの学生が試験を受けるにあたってお願いしても、すぐにOKが出るんです。

ハッセルブラッドのロゴ入りの戸棚

― それは、すごい。企業が学生を信用しているということでもあるし、何よりも社会の中にサポートする文化が完全に浸透している証ですね。

他にも学生に対して資材や塗料、その他の必要なものを企業から提供してもらえたり、学生が展示会をしたいと思った時も、街中のショールームを借りるにあたってお金がかかるわけですが、どこかの企業にスポンサーになってもらおうと声をかけると比較的スポンサーも見つかりやすかったです。驚くことに向こうでは小学生でもスポンサー探しをしていますからね。

― 作品を作ってからそれを第三者にアピールするところ、いわゆる、プロデューサー的な視点や営業的な視点というのは職人やアーティストにとって苦手だったり、難しいところだと思うのですが、生きていく為には必要なことだし、その辺のバランスを磨けるのは大きいことですね。

作品を作り続けて生きていく為にも「売る」ということはやはり、絶対に必要な部分ですからね。スウェーデン滞在中に二つ目に通ったカールマルムステン(木工技術デザインセンター)では、英語を使って自分や自分の作品をどうアピールするかという授業や、きれいに見せる写真の撮り方から経営的な部分の授業も盛り込まれていました。貴族や王様がいてサポートしてくれるなら別ですけど(笑)、今の時代にものつくりをする人が生きていく為にはとても重要な要素だと思います。

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