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10代にして料理長の仕事を!

E:札幌グランドホテルではどのようなことをされていたのですか?

従業員用の飯炊きのパートで入っているわけだから当然、調理場に立てるわけじゃないし、夕方には仕事も終わってしまう。 そこで志願して山のように溜まっている何百人もの宴会の食器を一人で洗い始めたんです。 先輩たちは仕事が終わるとみんなきれいに片付いているからビックリしますよね。それを半年間続けました。 そうしたらある時、人事課に認められて正社員になれって言われたんです。その時は嬉しかったですねぇ。

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E:先輩に与えられた仕事だけをこなすのではなく、率先して仕事を生み出すなんて、なかなか、十代の頃に出来ることじゃないです。 特にアルバイトだったりすると、どうしても時給換算しちゃうじゃないですか。

そこはやっぱり、料理が好きだから。あとは、はっきりとしていなくても目標とか夢があったからですかね。 だから、社員になってからは寮を与えられるんですけど、僕だけ仕事が終わっても帰らずにずっと朝までいろいろな料理の練習を続けていました。 だけど、配属されたのが、「原生林」という本格フランス料理店だったんです。 僕はハンバーグを作りたいんだけど、ハンバーグは喫茶店で出すもので、僕の方はもっと高級なステーキや小難しい料理ばっかりだったんです。

E:それで、どうされたんですか?

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僕はどうしてもハンバーグを作る方へ行きたかったんだけど、我儘を言うわけにもいかない・・・。 それでとりあえず、与えられた環境で一生懸命やってみることにしたんです。 そうしたら、やっぱり新しいことを覚えるから、だんだん楽しくなってきて・・・それから、ちょっとづつフランス料理の世界へ入っていったわけです。 それから18歳になる頃には人の何倍も練習していたから店のほとんどの料理を作れるようになってしまっていて、 芸能人のディナーショーとか政治家のパーティーがあると本来、料理長がやるワゴンサービスで料理の説明をしたり、 「お味はどうですか?」なんて聞きに行ったりする役を任されるようになっていました。

E:えー!まだ18歳ですよね。まだ、駆け出しじゃないですか。

一般的にはね。だから、当時は「なんだ、料理人の世界もこんなもんか」とたかをくくって天狗になりかけていた時期です。

E:先輩からの嫉妬やいじめにあったりしませんでしたか?

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うん、やっぱりありましたよ。そんな時、ある先輩から「おまえはここで天狗になっているかもしれないが、 上には上があって東京の帝国ホテルには料理の神様といわれる村上シェフという人がいるんだ」っていう話を聞いたんです。 その当時、僕の心には「なんで俺ばっかり、こんなに苦労しなくちゃいけないんだ」とコンプレックスを抱いていたから、 「神様」っていう響きが気になってどうしても、一度会ってみたいし、もっと大きな世界にチャレンジしてみたいって思い始めたんです。

帝国ホテルの洗い場からスイス大使館の料理人に転身!

E:それですぐに上京して帝国ホテルに入られたんですね。

ところがこれも簡単ではなかったんです。 当時はちょうどオイルショックの時代で僕が行ったときには料理人の希望退職者を募っている時で村上さんに会って最初に言われたのが、 パート扱いで洗い場だったら空いていると・・・。

E:また、振り出しに戻ってしまった感じですね・・・。

はい。でも、タンカ切って身寄りもなく上京して、さらに上京した日に3畳半とはいえ、安いアパートを借りてしまっているのでやるしかない。

E:それから厨房に入ることはできたのですか?

帝国ホテルには600人もの料理人がいるんです。結局、空きが出なくて、気が付いたら皿洗いだけで2年の月日が経ち、 20歳の夏になっていました。この頃はもう、完全に気持ちが萎えていて、北海道に戻って漁師でもやろうかと思っていたんです。 そこで、どうせ帰るなら18店舗ある全てのレストランの鍋をピカピカに磨いて自分の仕事を納得させてから帰ろうと思い、 志願して各レストランの鍋洗いを始めたんです。

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E:それまでが逆境からのスピード出世だっただけに大きな挫折だったんでしょうね。

はい。でも、それから秋になっていきなり、村上料理長に呼び出されたんです。 そこで「スイスのジュネーブは国際機関が多く集っていて懇親会やパーティーがたくさんある。 そこで大使館付きのコックを一人派遣して欲しいとの要請があったんだが、僕は君に決めたから。」といきなり、言われたんです。

E:見ていないようで見てくれていたということですね。でも、本人からしたらビックリしますよねー。

もう、それはびっくりしました。チャンスだし可能性に賭けて頂いたと思い頑張ろうと思いましたね。

E:ヨーロッパに渡ってからはどうやって勉強していったんですか?かなり、苦労されたと思いますが。

もう、苦労はたくさんありますけど、まず僕はちゃんとしたコース料理をそれまで作ったことが無かったんですね。

E:え!スイスに行くまで?

はい。ある日、アメリカ大使ご夫妻を含む14人のゲストが来る晩餐会があるからフォーマルなディナーを作ってほしいとの依頼を受けたんです。 ところがコース料理がどういうものかわからない(笑)。そこで大使に嘘をついて「当日までに1日だけお休みをください。」と伝え、 その休みの日にアメリカ大使が行きつけの個室のレストランを探し出して「今日、1日見学させてくれないか」と連絡をしたんです。 「リオンドール」というレストランなんだけど、そこの厨房に一日体験で入れてもらって仕入れ先からすべて教えてもらって・・・。 それでなんとか、その週末の晩餐会に備えたことがありました。

E:ゲストの反応はどうだったんですか?

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これが、大ウケで。今でも覚えてる。ウサギのマスタードソースだったんだけど、アメリカ大使が「なんで君は僕の好みを知っているんだ?」 って(笑)。そりゃ、そうだよね、ゲストの好みや趣向をすべて事前にリサーチしているんだから。

E:なるほど。三國さんにとって新しいことにチャレンジするきっかけでもあるけど、ゲストからしたらこれほど嬉しいことはないですよね。 なによりも、わずかな期間で味を盗めることがすごい。緊張感のある実践で対応しながら覚えていったんですね。

そうですね。やっぱり、それが一番早いと思います。

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