«前へ  [  1  2  3  4  ] 

チャレンジする気持ちがあれば、道は必ず開ける。

― そりゃもう、受賞どころじゃない。従業員とはどんなことを話したんですか?

私が「もう辞める」って言った時にパスカルというスタッフがいるのですが「ここにいて嘆いていても流された樽の泥を落とすぐらいしかやることは無いから、せっかく選ばれたならとにかく一旦、帰国しなよ」って言ってくれたんです。それで、精神的にも最悪の状態だったけど、とりあえず一部、瓶詰めまで終わっていた第1号のワインを空輸で送って自分も沈んだ気持ちのまま日本に帰国して授賞式に参加しました。

Earth Interview14 新井順子
Ludovic Chansonの買い付け時の様子

ところが、驚いたのがその時に提供したワインを飲んだ会場のお客さん達がみんな「美味しい!」って言ってくれたんですね。心の中では「ああ、実は私はもう辞めるつもりでいるのに・・・」って思っていたので複雑な気持ちでしたけど、やっぱり、自分が一生懸命やってきた仕事を評価して頂いたことは嬉しいですよね。

― 確かに。何気ないお客様の一言がエネルギーになるっていうことはありますよね。でも、それから、再度チャレンジしようとするにしても樽も流されちゃって、ほとんどまた0からのスタートですよね。

そうなんですよ。やるにしても実際には現実的な問題がありますからね。ワインを作る過程で樽の中のワインをいったんキューブに戻して再度、樽を洗い直してから又、戻すという作業があるのですが、フランスにもどってから流されなかったワインが1/3ほどあったのでその作業をやっていたんです。通常であれば、うちは無農薬で作っているから添加酵母を加えずに樽から出したら底に残っているオリを取って活かすのですが、それが洪水でダメになってしまったと思っていたので、もうダメかなと思っていたんです。

Earth Interview14 新井順子

ところが、その後、パスカルが「ジュンコ、大変だ。ワインがまた発酵を始めている!」って言うんですよ。実際に見たらもう、感動したというか驚きましたし、水害から残っても尚、自分の力で自然発酵を始めたワインを見て「なんて強い子たちなの!」っていう気持ちになりました。その瞬間からもう、辞めるなんていう発想は一切なくなりましたね。

― 今があるのはホントにその時に生き残ってくれた奇跡のワインがあるからかもしれないですね。新井さんのワインへの愛情を感じるとても、感動的な話です。

もう、あの時は本当に最悪でしたから。今思うとあれがうちのワイナリーの転換期だったと思います。この経験があったからその後も様々な出来事がありましたけど、どんなことが起きても絶対に負けないって思えるようになりましたしね。

― フランスに渡ってワイナリー経営を始めてから10年が経とうとしていますが、その情熱は他にも様々なお仕事に派生していますね。バランスとしてはどんな感じでこなしてらっしゃるんですか?

やっぱり、ほとんどワイナリーの方で時間を取られちゃうんですけど、日本では輸入会社、ワイン教室、ワインバーの経営、実は今年の4月から日本で大学生もやりはじめました。毎月フランスと日本を往復しているのでやたらとマイルがたまりますよ(笑)。あとは時間を見て東北のボランティアも積極的にやっています。他にもやりたいことはたくさんあるんですよ。

― 今日、こうしてお話を伺っていても、すごくエネルギーを感じますが、実際にやっている仕事の量もハンパじゃないですね。今後の夢やビジョンはどんなことを描いていらっしゃいますか?

フランスでワインを作り始めてから見習いで働きたいって来た、若い人たちがたくさんいるんですね。話してみると彼らのほとんどが自分の将来に不安を抱えながら自分探しみたいな感覚で来ているんです。私からしたら、ただのあまったれなんですけどね(笑)。でも、この10年の間、そういう子たちを見てきて面白いのは、最初は日本の社会の中であまり揉まれた経験がない子たちが朝から晩まで肉体労働を1年間必死にやると自然と答えが見つかって帰って行くのをたくさん見てきたんです。そして、実社会に戻ってからバリバリ頑張ってやっているんですよね。

― 大自然の中で働くことで何かを掴んだということですね。

Earth Interview14 新井順子

きっとそうだと思います。まだ、現時点で具体的に言えませんが、実はこの経験から農業を通じて若い人たちが健全に生きていけるような仕組みを作っていこうと思って動いているんです。

もちろん、インターネットとか情報化が進んで若い人たちの環境は私の世代の時とは大きく違うと思います。でも、人間の基本的な生き方とか考え方とかは今も昔も変わらないと思うし、そういうことを自然の中で汗を流しながら働くと感じ取ることができますからね。

― なんだかとても楽しみです。これから海外に出て何かを学びたいと思っている若い人たちに最後に一言いただけますか。

言葉の壁で海外に行かない人っているけど、それはすごくもったいない。自分が赤ちゃんの時に泣き叫びながらも意思を伝えていたように、体を動かすとかどんな手段でもいいから意思を伝えようと行動すれば必ず道は開けます。恋愛にマニュアルや言葉が必要無いように、まずは前向きな気持ちで外に出て、どんなことでもいいから新しい世界にチャレンジしてもらいたいですね。そういう気持ちがあればどんな人生でもきっと道は開けると思います。

― 今日はどうもありがとうございました!

こちらこそ、どうもありがとうございました。

«前へ  [  1  2  3  4  ] 
Earth Interview01 三國清三 Earth Interview02 小菅優 Earth Interview03 舘野真知子 Earth Interview04 須藤生 Earth Interview05 田邊淳司 Earth Interview06 吉良さおり Earth Interview07 平富恵 Earth Interview08 横山智佐子 Earth Interview09 HIDEBOH Earth Interview10 高木康政 Earth Interview11 板倉由未子 Earth Interview12 CHISATO Earth Interview13 門田瑠衣子 Earth Interview15 桂かい枝 Earth Interview16 中島央 Earth Interview17 鈴木岳 Earth Interview18 廣川まさき Earth Interview19 大澤亮 Earth Interview20 高良結香 Earth Interview21 佐々木裕子 Earth Interview22 トシバウロン Earth Interview23 サンドラ・ヘフェリン Earth Interview24 岩井孝夫 Earth Interview25 井原慶子 Earth Interview26 喜井豊治 Earth Interview27 木全ミツ Earth Interview28 梅若ソラヤ Earth Interview29 中島央2 Earth Interview30 大山光一
TOPへ